ネット広告市場はバザールか(1)デジタル広告取引の基礎

ネット広告市場はバザールか(1)デジタル広告取引の基礎

ネット広告の掲載基準が、「どこに掲出されるのか」というメディア主体から、「誰に掲出するのか」というオーディエンス主体に変わってきた。Webページ上の行動を、Cookieを利用してすべて記録し、1人ひとりの行動履歴からその人の個人的興味を類推するという手法が確立されてきたからである。

そして、このオーディエンス・ターゲティングをベースに広告スペースと広告クリエイティブ(ならびに掲載料金)のやり取りを行う場がAd ExchangeやAd Marketplaceと言われる「取引所」だ。この取引所を挟んで、広告スペースを買う広告主側が利用するシステムをデマンド・サイド・プラットフォーム(DSP)と呼び、広告スペースを売る媒体社側が利用するシステムをサプライ・サイド・プラットフォーム(SSP)と呼ぶ。

図1

広告主は、DSPを使って「買い付け入札」を行う。設定項目は、掲載期間と買付予算、掲載場所(媒体社カテゴリやページ上の位置)、閲覧される地理的場所、オーディエンス情報(性別、年齢層、興味分野、リターゲティング情報)といったものである。これらの買付条件を広告クリエイティブとランディングページ(広告をクリックして遷移した先)情報とともに、DSPに設定し広告の掲載を始める。

一方媒体社は、SSPを使って「販売応札」を行う。その設定項目は、応札価格(通常RPM:Revenue Par Million:1,000回表示あたり収入)、広告掲載位置とサイズ・提供可能インプレッション(単に在庫と呼ぶことがある)、広告主のカテゴリ(ゲームの広告を排除する、特定の企業群だけを対象にするなど)、広告閲覧者の地域・デバイス種類、入札方法といったものである。

こうやって、Ad Exchangeを経由して1つひとつの広告スペースの取引がなされていく。もちろん、媒体社が広告主とアナログに直接契約をしたものとか、Ad Exchangeを通さずにAd Neworkから定額で購入するというルートもあるため、あるニュースサイトを一瞥しただけではどういった取引の結果この広告が出ているのかは即答できない、それほどネット広告の取引は複雑なのだ。

Ad Exchangeを「取引所」と書いたが、実際これらのネット広告取引の仕組みを作ったのは、リーマンショック以降にアメリカ東海岸の金融業界から追い出された「金融工学」のプロたちだと言われている。広告スペースの1つひとつを、複数の入札者からのさまざまな買付条件の中から最適なものを瞬時に選び出して取引を成り立たせていく、まさに証券取引などで使われていた技術である。

DSP、Ad Exchange、SSPを経由してやりとりされる広告取引のもっともエキサイティングなものは、リアルタイム・ビッディング(RTB)だ。広告掲載枠が発生するたびに、その枠の競争入札を行い、配信する広告を決定する方式のことである。広告の掲載されるWebページが表示されようとするその刹那に、複数の広告主がその枠に対してあらかじめ設定した入札条件で競争をし、勝った社の広告クリエイティブがそのWebページに表示されるというものである。もちろん、システム(プログラム)同士のやり取りで実行されるもので、こういった取引を「プログラマティック取引」と呼ぶこともある。

その取引に必要な、少なくとも十数回にわたる各サーバー間のやり取りが0.5秒以下で完了する。まさに「即時競売」と言われるゆえんだ。デジタル・マーケティング企業のTurn社がその有様をインフォグラフィックにし、AdWeekが紹介している。

http://www.adweek.com/news/technology/here-life-digital-ad-infographic-153497

次回に続きます。

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