スマートフォンと電子マネーの深い関係(2)-NFC決済への期待と現実

前回は、おサイフケータイの現状について説明しましたが、今回は同じく非接触通信のNFCを用いた、スマートフォン向け決済サービスの動向について触れていきたいと思います。

NFCはFeliCaなどと上位互換性を持つ、国際標準規格の非接触通信技術です。世界でさまざまな事業者が、NFCを用いたモバイル決済、要するにおサイフケータイに類する決済サービスを実現するための取り組みを進めています。日本にも比較的縁がある事例としては、韓国の「cashbee」が上げられるでしょう。これは韓国内で提供されている、NFCを用いたプリペイド方式の電子マネーサービスです。ロッテグループの店舗を中心に、コンビニエンスストアやファーストフード、公共交通機関などで決済が利用できるもので、スマートフォンのNFCを用いた決済も可能なことから、日本の主要3キャリアのNFC対応スマートフォンでcashbeeを利用することも可能です。

cashbee 画面

またマスターカードの「PayPass」も、日本のスマートフォンで利用できるサービスの1つとして挙げられます。こちらもNFCを用いた決済サービスですが、クレジットカードと紐付けて利用するポストペイ方式を採用しています。また世界各国のマスターカード加盟店、かつPayPassのリーダーが設置されている所であれば国を問わず決済できるのも特徴です。日本ではNTTドコモのクレジット決済サービス「iD」をPayPassで利用できる仕組みが整えられており、NFC対応スマートフォンでの決済利用が可能です。

他にも、PayPassに類似する仕組みとしてVISAが「Visa payWave」を提供しているほか、米国を主体として、携帯電話会社主体に立ち上げられた「ISIS」や、グーグルの「Google Wallet」など、いくつかのサービスが提供されています。

また、これは決済に限りませんが、日本のKDDIをはじめ、韓国や台湾、香港などの携帯電話事業者と業界団体がNFCの普及に向けて2014年2月に「ASIA NFCアライアンス」を設立しています。このような動向をみると、NFC決済の利用推進に向けた取り組み自体は、さまざまな所で進められていることがよく分かります。

ASIA NFCアライアンス

しかし、ここまで挙げたNFCによる決済サービスが、実際にスマートフォンで多くの人に利用されているかというと、決してそうではないというのが現状です。大きな課題は、決定的な牽引役が不在だという点にあります。いち早くサービスを展開して主導権を握ろうと多くの事業者が独自にサービスを展開した結果、サービスや取り組みが分散してしまっています。決済リーダーを設置する加盟店、利用者のいずれもメリットを見出しにくくなっていることが、NFCの利用が進まない要因となっています。

日本ではNTTドコモが主導し、国内のおサイフケータイ基盤整備が進められてきました。同様に世界的にも、NFC決済普及の牽引役となる存在が求められるところです。そしてその牽引役として期待を集めるのが、アップル社が10月よりサービスを開始した「Apple Pay」です。

Apple Payは、9月に発売された「iPhone 6」「iPhone 6 Plus」に搭載された、NFCを用いた決済サービスです。各種クレジットカードをiPhone上に登録しておき、iPhoneをNFCリーダーにかざすことで、クレジットカードによる決済ができるというものです。指紋認証を用いてセキュリティを高めるなど独自の仕組みが導入されており、安全性が高められているのも特徴です。

Apple Payはあくまでアップル独自、かつサービス開始当初は米国のみでの展開となります。しかし、複数企業の思惑が絡むアライアンスではなく、人気・知名度ともに高いアップル単独で加盟店を募って決済事業を牽引することが、NFC決済の利用促進の起爆剤となるのではと期待されています。

Apple Pay

次回は、非接触通信以外のモバイル決済について説明します。