超最適化で価値を生むIoT

IoT、「モノのインタネット」が何をしてくれるのか。その一つの解が最適化、効率化であろう。IoTがどのように最適化、効率化に寄与するのだろうか。IoTを取り組む企業の最先端をいく米国GE社の動向を追いながら見ていくことにしよう。

風力発電器からデータを取得して効率化とコストダウン

GE社は風力発電器の大手メーカーである。全世界で2万基以上の風力発電用タービンが稼働している。

これまで、ほとんどの風力発電器は故障、不具合が顕在化した際に修理するという対応を取っていた。そんな中、近年の風力タービンの大型化によって、修理作業の高度化が起こり、一旦修理をするとなると、その際に発生する手間やコストが膨大にかかるようになってきた。

そのような背景から事前のメンテナンスが重要となってきた。 このような背景からGE社は風力発電器へのセンサー搭載を先駆けて行うようになった。温度、湿度、風向などの気候に関するセンサーだけでなく、風力発電器の様々な部分にセンサーを取り付けた。風力発電器に搭載したセンサーから有益なデータを随時取得し、そのデータをクラウドに送信し、分析をリアルタイムに行っている。集められたデータは過去の故障・不具合を収めた膨大なデータベースを参照として故障・不具合の予兆を発見する。

このようにデータから発見された故障・不具合の予兆からいち早く部品の取り換えなどを行っている。また、センサーから得られた普段の稼働状況からより効率的な運転を試みることにより価値を創出することができる。このような風力発電器から得られるセンサーデータを収集、分析をすることにより、最大5%以上の発電電力量の向上、1基ごと最大20%の利益向上が実現されたという。

GE社は設置できるだけ多くのセンサーを設置し、インタネットと接続し、センサーが生成したデータを随時クラウドに送信し、リアルタイムにデータ分析をすることを徹底的に行った。大量のセンサーを取り付けることや、リアルタイムにデータを分析すること自体に膨大なコストがかかってしまうのではないかと疑ってしまうかもしれない。しかしながら、それだけのコストをかけたとしても、効率化による利益を得ることができるのだ。

より詳細に、微細に変化を見分けられるだけのデータをセンサーによって容易に取得できるようになったことと、リアルタイムにそのデータを分析できるようになったことにより、効率の良い稼働の仕方をより詳細に判断することができるようになったことが勝因だ。これこそIoTが実現できる最適化、効率化である。

ジェットエンジンにも搭載されるセンサー

GE社は飛行機のジェットエンジンでもIoTにおける最適化、効率化を志向している。

ジェットエンジンに取り付けたセンサーデータを分析することで、空空港の侵入経路、着陸時のスピードなどを「最適化」させることに成功させている。また、分析結果により不具合をいち早く見つけ、メンテナンスや修理を実行することができるようになった。これらによって不測のエンジントラブルによるフライトキャンセルでの利益損失を回避することができるようになった。

実は、ジェットエンジンに取り付けられたセンサーから吐き出されるデータの量は1フライトにつき1テラバイトとも言われている。これだけのたくさんのデータを素早く分析し現場に知見を提供することにより、最適化、効率化を図ることが可能となる。実際、航空会社エアアジアは燃料費が2014年実績で約1000万ドル節約できたという。

GE社以外でも航空機のジェットエンジンについて興味深い取り組みがある。

「Power by the Hour」というものがある。英国ロールスロイス社が展開する新しいビジネスモデルである。これはエンジン自体を販売するのではなく、エンジンの稼働時間に対して課金をするモデルである。航空機エンジンのユーザである航空会社は飛行時間で費用を支払うことになる。航空会社はこれまで航空機を買った後は自力でジェットエンジンの整備を行っていた。Power by the Hourのサービスでは、ジェットエンジンの整備、消耗品の交換、整備士の人件費などすべてロールスロイス社の役割となる。航空機会社にとっては、機体整備には利益を生まないため、ありがたいサービスとなる。ロールスロイス社としては、飛行時の様々なセンサーからのデータから事前に不具合をいち早く見つけ、対応することが可能となり、それが対価として得ることができるのだ。これらのデータから最適化、効率化の知見や結果は、効率的なフライトパターンの見直しなどの提言を行うこともできる。

ジェットエンジンというモノを売り切るのではなく、IoTの仕組みによって得られたデータを分析することで得られた知見を活かし、モノを通じたサービス提供をビジネスの主眼にしていくことをサービタイゼーション(Servitization)と呼ばれる。これまで製品そのもので差別化をし、競争をしていた時代から、モノの使用時に着目し、サービスによって価値を見出すモデルに変わってきているのだ。そのサービスを生み出す力が、IoTであり、データであり、データを分析する能力なのだ。サービスの源泉にIoTがある。

センサーデータを横断的に活用する

GE社では、風力発電器やジェットエンジンだけでなく、自社グループで取り扱っている、電車、船舶、タービン、医療機器など、ネットワークに繋がる機械から膨大なデータを分析することを試みている。この分析により効率化することで、顧客に価値を提供できるとしている。さらにGE社は、「Power of 1%」を掲げ、「当社のすべての顧客の1%の効率化が年間200億ドルの利益を生みだせる」と述べている。具体的には、15年間で航空機は300億ドル、発電所は660億ドル、鉄道は270億ドルのコスト削減が可能だという。

この1%の改善を検知し、実現を可能としているのがIoTである。モノがインタネットに繋がることにより、モノから生み出されたデータをインタネット上で集約をできる。このデータは現実で起こっていることの写像である。このようにデジタル環境で生成されたデータによって現実の様子をリアルタイムに再現することをデジタルツインと呼んだりもする。

デジタルツインによって、我々は現実で起こっていることをいち早く把握したり認識したりすることが可能となった。これにより、不測の事態に陥る前に対応ができるようになった。さらに、無駄な動きをつぶさにチェックできるようになった。我々はどのように最適に効率的に動く事かできるかを細かく考えることができるようになった。

これこそが、IoTが生み出す大きな価値となっている。IoTによって得られたデータを対象として、データ分析して見つかる小さなことが、大きなポテンシャルを秘めているのだ。