自社の製品やソリューションを顧客に向けてアピールする時に有効な導入事例コンテンツ。最近のマーケティングにおける動画コンテンツの重要性から、導入事例を動画で制作したいということも増えてきました。本記事では、実際の制作時にチェックしておきたいポイントをご紹介します。
制作にあたって頭の片隅に入れておくと、制作や進行がスムーズに進められると思います。
導入事例動画の今
自社の製品やソリューションをアピールする上で、実際の使用感をユーザーや顧客にダイレクトに語ってもらう「導入事例動画」は、導入事例コンテンツの中でも訴求力の高いものになります。
動画コンテンツがマーケティングの主流へと推移していることもあり、インタビュー形式やテレビ番組風のものから、CGやアニメーションで制作したものまで、多くの企業でさまざまな導入事例動画が制作され、企業のサイトやYouTubeなどの動画共有サイトに掲載されています。
■ Google 動画検索「導入事例」
■ YouTube「導入事例」
このような導入事例動画を制作する場合、まずは何をすればよいのでしょうか。次からご紹介します。
1. 導入事例の基本を決める
動画に限らず、まず、導入事例を制作する際に決める事項が3点あります。
1・「誰にむけた導入事例なのか」
2・「何を訴求するのか」
3・「誰に語ってもらうのか」
の3つです。
1つ目は、制作する導入事例のターゲット設定です。男性なのか女性なのか、若い人なのか年配の方なのか、組織の中で企画をする人なのか、最終的な決定をする人なのか。導入事例のスタイルやデザインを決める上での重要なポイントです。
2つ目は、自社の製品やソリューションにおいて、どの部分をピックアップしてアピールするのか、という訴求内容の決定です。コスト、使いやすさ、導入の容易さ、性能の高さ、他にはない特長など、アピールする部分の絞り込みを行います。
3つ目は、他の2つとも関連しますが、導入事例へ登場する人物の選定です。導入事例の基本は製品やソリューションの使用者(お客様)に登場してもらうことです。ただ、ターゲットやアピールするポイントによって、導入や購入を決定した人なのか、現場で使っている人なのか、あるいは社長や役員といった人が有効な場合もあります。
2. 導入事例動画の構成を検討する
導入事例制作において、基本の3つが決まったらコンテンツ構成を検討しましょう。基本的な導入事例コンテンツの構成は、 動画・印刷物・ウェブページなどチャネルに関わらず、下記の5点となります。
【導入事例動画の構成】
1・導入事例に登場するユーザーや企業の紹介
2・ユーザーや企業が抱えていた課題
3・その課題を解決した製品やソリューションの紹介
4・課題解決の方法
5・導入事例のまとめ
順番やそれぞれの紹介方法はいろいろありますが、この5つが揃っていれば導入事例として成立します。どの部分をどのような形でふくらませるかは、導入事例制作にかけられる時間と費用によって調整しましょう。
3. 導入事例動画の費用を決める
実際に導入事例動画を制作するにあたって、一番気になる部分は費用なのではないでしょうか。動画制作の費用が下がってきたとはいえ、動画の制作費はPDFやウェブページなどと比べると高額です。
導入事例動画を制作する上で、見積もりを依頼した際に提示される主な項目をご紹介します。
- ・企画構成費
- ・シナリオ・コンテ制作費
- ・撮影費(スタッフ○○名・使用機材)
- ・編集費(スタジオ○○時間・編集スタッフ○名)
- ・素材購入費
- ・ナレーション費(ナレーター○○名)
- ・BGM費(制作・購入費)
- ・エンコード費
役者を使用したり、CGを使った場合などはさらに項目が追加されますが、基本的にはこのような項目が動画の制作見積もりで提示されます。その上で現在では、例えば制作会社が用意するテンプレートに沿ったものであれば、比較的安価に導入事例動画を制作することが可能になっています。
一方、動画制作は費用をかければ、それに比例して完成時のクオリティが高くなります。下がってきている動画制作費というのは「低い品質でもコンテンツとして成立する」から、という面が大きく、競合のコンテンツと比べて品質を向上させるには、ある程度のコストを検討する必要があるでしょう。
たとえば、動画の撮影に日数をかける、撮影時にキレイに撮れるように、カメラを良い物にする、照明やプロのメイクを入れる、編集時にすこし凝った演出を入れる、独自の構成にするなどで、動画として見やすく飽きにくいコンテンツにすることができます。
4. 撮影時に訴求したい「もの」や語ってもらいたい「人」を決める
導入事例にするコンテンツ、費用が決定したら、動画の撮影準備を行います。動画コンテンツは、当たり前ですが全てを映像として作る必要があります。
そのため、どれだけ「素材」としての動画を撮影することができるのか、制作する導入事例動画で使うことのできる既存の「素材」がどれだけあるか、ということが重要になります。
「1. 導入事例の基本」でご紹介した、「何を訴求するのか」「誰に語ってもらうのか」というのが、この時に大きく影響します。
導入事例は、基本的に自社のユーザーや顧客企業にご協力をお願いするため、撮影したいものや人もユーザーや顧客企業に存在していることが必然的に多くなります。
導入事例動画の撮影にあたっては、事前に「訴求したいもの」が撮影可能か、「語ってもらいたい人」が撮影に協力してもらえるかを確認しましょう。
そして、場合によっては「訴求したいもの」や「語ってもらいたい人」を変更したり、撮影ではなくCGやアニメーションにするなど、別の方法も検討しましょう。
5. 撮影時の許可と申請を行う
撮影するものや人が決まった後、スムーズに撮影する際の調整や準備を行います。
ここで重要となるのが、「許可」と「申請」です。
動画の撮影は多くのスタッフが協力して行います。基本的には「カメラマン」「ディレクター」「アシスタント」の3名、音声が必要な場合は「音声スタッフ」も入れて4名が最小ユニットとなります。そして、大型の台車2台分ほどの撮影機材を使用します。
動画撮影時には、多くの人と機材が移動するため、撮影場所にあらかじめそのことを伝え、準備をしてもらうとスムーズです。特に撮影場所や人に時間的な制限がある場合が多いので、その点も事前に確認しましょう。
一般的な企業で撮影する場合に必要となる、確認事項として以下をご紹介します。
- ・撮影機材を搬入する「許可」や「申請」の有無と搬入方法
- ・撮影スタッフが撮影先で移動する「許可」や「申請」の有無
- ・撮影場所とは別に、撮影機材を置くための場所の確保
- ・撮影するモノや人がいる場所が撮影に向いているかの確認
- ・撮影するモノや人がいる場所に立ち入る「許可」や「申請」と時間的な制限などの確認
動画撮影に適した場所かどうかは、できれば「ロケハン」として撮影スタッフに直接確認してもらうと、撮影方法の事前確認などもできますし、当日の移動もよりスムーズに行うことができます。
撮影当日は、主にディレクターが撮影を進行します。依頼主の方は必要に応じてディレクターに声をかけていただきながら、撮影に立会いましょう。
6. 動画の編集と確認を行う
撮影が終われば、導入事例動画も8割がた完成です。後は撮影した素材と、それ以外の素材を組み合わせて動画を編集し、関係者への確認を行います。
編集における流れと、その段階で確認する項目をご紹介します。
- ・音声の書き起こし
(撮影した中から音声として使用する部分をテキスト化、音声として使用NGなものなどを確認する) - ・粗編集版の制作
(演出などを入れずに、音声部分や要素だけをつないだバージョンを作成して、動画の構成と長さを確認する) - ・ナレーション原稿の作成
(粗編集版で確認した構成と長さに合わせた、ナレーションテキストを確認) - ・プレビュー版の制作
(動画の構成や長さ、撮影時の音声や画面表示する肩書やテロップなどのテキストを確認) - ・ナレーション収録/MA
(ナレーションで使用する語句のイントネーションやBGMなどを確認) - ・最終版の制作
(ナレーションテキストを含めた画面と音声の最終確認)
撮影にご協力いただいたユーザーや顧客にどの段階で確認するかは、そのユーザーや顧客との関係によって変わります。適切なタイミングを見計らいましょう。
ただし、ナレーションを収録してしまうと、構成などを含めて動画の修正が難しくなることが多いです。ユーザーや顧客に確認が必要な場合は、ナレーションが入っていないプレビュー版より以前の段階で行うのがおすすめです。
導入事例動画のメリット
最終版の確認が終われば、導入事例動画の完成です。
撮影や編集の難易度にもよりますが、導入事例動画の制作期間は企画からおおよ1.5カ月が目安となります。そのなかで6割は事前準備の期間で、2割が撮影期間、残りの2割が編集と確認の期間です。
ほかのコンテンツと比べて、確認する項目も多く、制作期間の長さもあり、導入事例動画はまだハードルが高いと思われるかもしれません。
しかし、導入事例動画はそのハードルを超えるだけの高い訴求力と大きく広がる活用方法があります。ウェブサイトや動画共有サイトに掲載するだけではなく、イベントやセミナーで流したり、SNSでの拡散やデジタルサイネージと組み合わせることも、いまでは容易になっています。
多岐に渡るマーケティング資産として、ぜひ貴社の製品やソリューションの「訴求したいもの」や「語って欲しいお客様」を見つけて、魅力的な導入事例動画を制作してみましょう。